「綿の育て方レクチャー会」リポート 第3弾
今回は、綿を加工する伝統的な道具の紹介と、綿繰り・糸紡ぎ体験についてお伝えします。

前回まででお伝えした綿の種類や育て方のレクチャーは、椅子に座ってお話を聞く講義スタイルでしたが、ここからは参加者も席を立って見学や体験を行うワークショップスタイルとなりました。

白くてふわふわな綿はかわいい。でも、どうすればこれが糸や布になるの?
その答えを、体験を通じて教わりました。

綿に埋もれた種、上手に取り出すには?

植物からとれる天然の繊維素材である綿(コットンボール)。
これを糸車で細い糸に紡ぐわけですが、綿の中には種が包まれているので、そのままでは使えません。
そこでまず、綿繰り機(わたくりき)という道具を使って、中の種を取り除きます。
綿繰り機
ローラーの間に綿を挟み、ハンドルを回して綿を向こうへ繰り出すと、種だけが残って手前に落ちる仕組みです。

簡単そうに見えて、これがなかなか難しい……!

綿がローラーの間にうまく入っていってくれません。詰まってしまったのか、ハンドルがやたらと重くて、にっちもさっちもいかなくなってしまいました。

ところが、スタッフさんに替わってもらったとたん、くるくるっとハンドルが回り、綿が吸い込まれて、残った種がぽろぽろ落ちてきました。経験の違いを感じます……!

ぜひ動画もどうぞ。(音声はありません)


こうして白い綿だけになってようやく、繊維の原料として使えるようになります。種は種でとっておけば、来年また栽培可能。また、種を搾って油をとったり、その油粕を肥料にしたりと、昔の人は綿を余すことなく活用していたそうです。

なお、綿繰り機のハンドルの反対側に、2本のらせんが噛みあった部分があるのですが、
「指を挟まないように気をつけてください」
と、スタッフさんからご忠告が。確かに、ここに指を巻き込まれたらすりつぶされそうです……

みなさんも、綿繰り体験の際はくれぐれもご注意くださいね。


華麗な手さばきで、綿がふわっふわ

次は、綿打ち(わたうち)です。
弓の弦の部分で綿をバチバチ弾くことで、綿の繊維をほぐしていきます。
同時に、繊維の塊や埃を取り除きます。

スタッフの方の手付きが本当に華麗でした。
最初と最後で、綿のふわふわ感が全然違います。

動画はこちらです。途中2回ほど参加者への説明のために手が止まりますが、ぜひ最後までご覧ください。



もちろん現代では、これらの作業は機械化されています。
こちらは機械でほぐした綿を棒状にまとめたもの。綿あめのようにきめ細かく、ソフトな手触りです。
機械で繊維をほぐした、ふわっふわな綿
手作業でここまでふわふわにしようと思うと、ひたすら弓を打たなければいけません。
昔の人が、一つのものを作り出すためにどれほど手間と時間をかけていたのか、垣間見えた瞬間でした。

昔ながらの糸車

ここでようやく、糸車の出番です。
糸車で綿から糸を紡ぐ様子、ふるさと歴史学習館のスタッフさんが実演
綿打ちしてほぐした綿を棒状にまとめて、左手に持ちます。
繊維を少しとって糸車から突き出た細い棒の部分につなぎ、右手で糸車を回します。
すると、繊維が少しずつ引き出され、細くよじられながら巻き取られていきます。

ちょっと紛らわしいのですが、画面手前の車輪とつながっている糸は、あくまで糸車のパーツですよ。画面の右奥で細い棒に巻き取られているのが、紡いだ木綿糸です。

綿を押さえる力加減と、糸車を回す速度の加減が大切で、失敗すると途中で糸が切れてしまいます。細く均一な糸を紡ぐのはとても難しい、デリケートな作業です。
もしかして、「繊細」という言葉はここから生まれたのでしょうか?



スタッフさんが糸車を回すと、途切れることなく糸が紡がれていきます。
体験学習に来た小学生の前で実演すると、拍手が上がるとか。

ふわふわした綿が糸になるのを見て、子どもたちが喝采する様子が、目に浮かびます。やっぱり目の前で実演してもらうと、「自分もやってみたい!」という気持ちが高まりますよね。

着物一着ができるまで

綿繰り機で種を取り、綿打ち弓で何度も弾いて繊維をほぐし、糸車で丁寧に紡ぐ……
たった一つの綿(コットンボール)を糸にするだけでも、かなりの手間と時間を要します。

一着の着物をつくるにはどれくらいの綿が必要かというと、なんと3kg分!
ふわふわ軽い綿の3kgですから、個数にすると約810個。畳み1枚に山積みになるほどの量です。
着物1着を作るのに必要な綿(コットンボール3kg分)
こんな膨大な綿を糸にして、染めて、機織り機で織って、ようやく木綿の着物ができあがります。かつて綿畑があちこちにあったという河内長野では、綿を育てるところから木綿製品ができるまでの営みが、人々の身近にあったのですね。


現代では繊維業は機械化され、服はお店で買うのが当たり前になりました。だからつい全然別物のように思ってしまいますが、機械でも手作業でも仕組みは同じですよね。天然の繊維を収穫して糸を紡ぎ、布を織る……これが繊維産業の原点であり、今も根底にあり続けていると思います。

今着ている綿100%のTシャツだって、もとは白くてふわふわな綿。

今回ふるさと記念館で綿繰りや糸紡ぎを体験したことで、植物から生まれた綿がどうやって糸になり、木綿製品になっていくのかを実感することができました。
伝統的なものづくりに目を向けることには、「古き良き時代」を懐かしむだけではなく、現代の産業の原理や仕組みを知るという意味もあるのではないでしょうか。


ふるさと歴史学習館に行くと、今回ご紹介した道具を使って、綿繰りや糸紡ぎを体験することができます。
現代を生きる”かわちーな・かわちーの”のみなさんが、「木綿糸ってこうやってできるんやなぁ」「自分で糸を作れるってすごい!」と、小さな感動を味わってくれますように。


「綿の育て方レクチャー会」リポートは、今回でおしまいです。
次回からは、我が家にやってきた綿の苗たちの成長をお伝えしていこうと思います。


<参考>