「綿(わた)の育て方レクチャー会」リポート第2弾。
今回は、綿の栽培方法についてお伝えします。(第1弾はこちら

「綿の里親プロジェクト」では、「糸繰り体験やワークショップに使うための綿をつくること」が最大のミッション。白くて綺麗な綿をたくさん収穫するには、どうすればいいのでしょうか。そのポイントも、たっぷりレクチャーしてもらいました。
綿の育て方ガイドブック、編集・発行byふるさと歴史学習館

花が咲き、実がつき、綿を吹く

綿は、その雪のような外見とは裏腹に、春過ぎから夏の終わりにかけての植物です。
種をまくのは、5月初旬。「夏も近づく八十八夜♪」で知られる、季節の変わり目が適しています。

学芸員さんが説明してくれた綿の生育過程を大まかにまとめると、

【5月:種まき】10日くらいで芽が出ます。
【6月:本葉】ゆっくりと草丈30cmくらいまで成長。
【7月:成長期】草丈が約80cmになったら芯止め。1m以内に抑えましょう。
【8月:開花】黄色い花が咲き、花が落ちると実がつきます。
【9月:収穫】実がはじけて白い綿が吹きます。綿が開き切ったら収穫します。

種まきは地面やプランターに直まきするか、ポットや育苗箱にまいて発芽後に植え替えます。

綿の里親プロジェクトでは、予めふるさと歴史学習館が黒ポットに種まきし、発芽させてくれています。その苗を里親が受け取り、各自が家で植え替えて育てていきます。
黒ポットに入った綿の苗
今回もらった苗は、ちょっと早めで4月末に種まきしたものだそうです。
レクチャー会当日(6月2日)の時点で、双葉まで成長していました。

植え替え時期は、発芽から2週間以内
――と、もらったガイドブックには書いてあるのですが、学芸員さん曰く、
「今双葉が出たところなので、本葉が何枚か出てきてから植え替えてあげてください」とのことでした。

綿は移植に弱いそうなので、あまり期間に縛られず、苗がしっかりしてくるまで待ってから植え替えるのが良さそうですね。

植え替えのポイント

植え替え場所は、日当たりが良く、水はけの良いところを選びます。
綿は連作を嫌うので、土は新しいものを使うほうが安心です。(市販の花や野菜用の土でOK)
古い土を使う場合、1週間前から土に石灰を混ぜて、弱アルカリ性にしておきます。その際、肥料も一緒に混ぜておきます。

苗ポットは手のひらサイズですが、綿は成長すると草丈80cmを超えるので、スペースには余裕が必要です。
  • 畑や庭に地植えするときは、株と株の間を20cm以上あけます。
  • プランターなら、一緒に植えるのは3株まで。
  • 鉢植えの場合、直径25cm以上の大きめの鉢に、1株ずつ植えます。
綿の苗、草丈10cm
植え替え後、草丈10cmくらいからは伸びが遅いそうです。でもそれは一生懸命根を張ろうとしているからで、見えないところでしっかり成長しているので大丈夫。

大切なのは、ここで水をやりすぎないこと!
綿の栽培で一番失敗しやすいのが、水のやりすぎによる根腐れだとか。水は土が乾かない程度にやれば充分です。6月は梅雨があるので、「長雨にもご注意ください」とのことでした。

ただし、花が咲いた後はしっかり水をやることが大切です。(朝夕の1日2回)

肥料のポイント

肥料は、夏までに多くて3回やればいいそうです。
  1.  種まきの約20日後(5月下旬~6月初)
  2.  種まきの約1か月半後(6月中旬~下旬)
  3.  成長が悪ければ、7月中旬までに
肥料のやり方・・・株と株の間に肥料をまいて土で覆います。
肥料の種類・・・油粕・鶏糞・化成肥料などが使えます。

レクチャー会では、学芸員さんがおすすめの肥料を紹介してくれました。
綿実油粕の袋
米袋みたいな大きな茶色い袋に書いてあるのは、「綿実油粕(めんじつあぶらかす)」の文字。
アブラナの種から菜種油がとれるように、綿の実(綿毛)の中にある種からも油がとれます。そのとき残る油粕が、綿実油粕です。

「こちら、けっこう万能の肥料で……」と、学芸員さんも太鼓判。
綿を育てるから綿の油粕を、というわけではなく、野菜や果物など、多様な作物に使えるそうです。
ちなみに製造元の「岡村製油株式会社」は、国内唯一の綿実搾油メーカーだとか。調べてみると、本社は大阪の柏原市で、明治25年創業の歴史ある企業です。

河内長野と同じく、柏原もかつて有数の綿の産地で、河内木綿が特産品でした。時代とともに昔ながらの綿づくりが衰退しても、綿を活用した搾油業は、こうして現代まで受け継がれているのですね。
(現在の綿実油の原料は洋綿です)

芯止めのポイント

芯止めとは、草丈が伸びすぎないように一番先の芽を摘み取ること。

綿は土の量が多い程伸びやすく、1.5mくらいまで成長することもあります。ですが、実にしっかり栄養を行き届かせ、たくさん綿を収穫するためには、草丈を1m以内に抑えるのがポイント。
そこで、草丈80cmに達した辺りで芯止めします。(7月初め~中頃)

伸びた部分を、ポキッと折っちゃって大丈夫だそうです。2~3回折れば、もう伸びてこなくなります。

ただし、雨の日に折るのは禁物。腐って病気のもとになるので、芯止めは晴れの日に行いましょう。


虫対策のポイント

手塩にかけて育てる綿が、「虫にやられちゃった……」なんてことになったら悲しすぎます。

学芸員さんが名指しで挙げた綿の天敵は、「ハマキムシ」
体長約2cmの緑色をした細長い芋虫です。巻いた葉の中に潜み、葉やつぼみを食べてしまいます。葉ごと駆除したいところですが、葉は光合成に必要なので、摘まずに葉を広げて中にいる虫だけ取り除くのがポイントです。

「ヨトウムシ」にも要注意。
ヨトウムシは体長1~5cmの芋虫。幼齢期は淡い緑色で、成長すると茶色になります。昼間は土中に潜っていて、夜になると出てきて葉や茎を食い荒らします。
駆除するには、被害が出た株の根元を軽く掘って、虫を見つけたら取り除きます。
また、卵の殻を割って株もとにまいておくと、予防できるそうです。

開花~収穫のポイント

綿は、オクラやハイビスカスと同じ「アオイ科」の植物です。
どちらも花が綺麗なことで知られますが、綿も、オクラの花に似た黄色くて可愛い花が咲きます。
開花時期は8月頃。わたしは実物を見たことがないので、今からとても楽しみです。

花が落ちると、すぐに実がつきます。

綿の実は株元(茎の下のほう)からついてくるのですが、最初にできた綿が、一番良い綿だそうです。来年用の種をとるなら、この綿からがベスト。
ふるさと歴史学習館で、種を取り出すための綿繰り機を貸してもらえるので、種をとって保管しておけば、来年は種まきから綿づくりにチャレンジできます。
綿繰り機、ふるさと歴史学習館で撮影

ここで注意ポイント。
夏は台風があるので、せっかくの実が風で落ちないよう注意が必要です。

8月の末頃、大きく膨らんだ実がはじけて、いよいよ白い綿が吹き始めます。
9月になり、綿が完全に開き切ったら収穫のとき。
「綿を触ってみて、ゴソッと落ちるのが収穫のサインです」と学芸員さん。

白い綿の部分だけを摘み取り、葉っぱや埃は取り除いておきます。

ここでのポイントは、雨が降る前に収穫すること。
綿は水で濡れると固くなり、茶色くなってしまうそうです。しろふわな綿を収穫するには、空模様をチェックして、雨に当てないことが大切ですね。

収穫したコットンボールは、天日干ししてしっかり乾燥させます。
乾燥が甘いと、ローラー状の道具で綿繰りするときに、種がつぶれてしまうそうです。

こちらはドライフラワーならぬドライコットン(和綿)。
ドライコットン(和綿)20170619110250
茎につけたまま乾燥させると、こんなふうにインテリアとしても楽しめるのですね。
ちなみに、和綿のコットンボールが下向きにつくのに対して、洋綿は上向きにつくそうです。

里親の特権!

収穫した綿は、半分はふるさと歴史学習館に提供しますが、もう半分は里親がもらえることになっています。
いくつくらい収穫できるものなのか、まだイメージできていないので、しっかりちゃっかり半分いただくことになるのか、それとも「たくさんとれたので9割がた提供しま~す」ということになるのかは謎なのですが。(後者の展開を希望!)

とにかく今は、苗が育って可愛い花を咲かせ、真っ白でふわふわしたコットンボールができる様子を見るのが楽しみで仕方ありません。
きっとそれが、「綿の里親」になる何よりの特権ですね。
黒ポットに入った綿の苗のアップ画像
今回のレクチャー会で教わったポイントを守って、良い綿を育てていきたいと思います。

それにしても、これらを説明してくれたのが園芸家でも植物学者でもなく、ふるさと歴史学習館の学芸員さんだと思うと、改めて驚かずにはいられません。河内長野の綿づくりの歴史や河内木綿の文化を伝えるために、綿を育て、栽培のノウハウを習得されたのでしょう。
本当に素敵で、ありがたいことです。


次回のリポートでは、そんな学芸員さんの本領発揮!?
伝統的な道具で実演してくれた、綿繰り、綿打ち、糸紡ぎについてお伝えしたいと思います。
学芸員さんはじめ、「ふるさと歴史学習館」スタッフの皆さんの見事なテクニックを、どうぞお楽しみに。

<参考>
【追記(2017.07.01)】
ふるさと歴史学習館の最新情報はこちらです(河内長野市HPふるさと文化財課)